第十三回そろり会

1.
節分や頬張りきれぬ歳の数 万作(あまり)
寒卵決然として屹立す いて丁(あまり・わさび・飛行船)
綿入れを着て冒険を思ひけり わさび(あまり) 今日の特選句
放たれし犬追う子らに春の風 鶉(あまり・柚・鶴吉・万作)
春野きて今描くなら非戦の犀 あまり(いて丁)
短日や研ぐ米こぼれこぼれたり 飛行船(あまり・柚・わさび・鶴吉・万作・鶉)
蛙出づ舗装の道で立ち往生 柚(あまり)

2.
潮騒と菜の花の仲はただならぬ わさび(あまり・柚)
豆皿に白魚のせて人待てり 鶉(あまり・いて丁)
蛤や海市ゆらぎぬ鍋の中 飛行船(わさび)
楽しきは春霜踏みし通い道 万作(あまり・柚・鶴吉)
霾(つちふる)や西方の父不恙(つつがなし) いて丁(あまり)
深爪のいたしバレンタインの日 あまり(いて丁・飛行船)
春月や独り暮らしの頼りなさ 柚(あまり)

3.
ざらしもよし薇の柔毛(にこげ)よし あまり(飛行船・いて丁・万作)
眼暗しせめて菜の花明かりなど いて丁(あまり・わさび・鶴吉・万作・鶉)
菜の花に埋もれ男の仕事かな 柚(あまり・鶴吉・いて丁・鶉)
バレンタイン心静かにやじろべい わさび(あまり・柚・鶉)
アブサンは淋しき酒か春の蝿 飛行船(あまり・いて丁)
薄色の袷手にとる春の空 万作(柚)

4.
桐箪笥とじて残り香鳥雲に わさび(あまり・いて丁)
菜の花の辛子と胡麻で争いぬ 万作(あまり・わさび)
亀鳴くや父の齢を超えたる日 いて丁(あまり・鶴吉・柚)
菜の花を摘む指先に野が薫る 飛行船(あまり・鶴吉・柚)
春の海ひねもす砂の女かな 鶉(あまり・飛行船)
焼き物の季節変わりて菜花あり 柚(あまり・万作・鶉)

5.

霞立ち生温き日なりバレンタイン 万作(あまり、いて丁、わさび、鶴吉)
手袋をぬいで嘘つく日本髪 わさび(飛行船、うずら、柚)
春の雨ぬっと顔出すぶちの猫 鶉(あまり、鶴吉)
母恋えば穴出づ蜥蜴こちら見る あまり(わさび)

6.
啓蟄や自問自答の住みごこち いて丁(鶉、万作)
再会や鰆しめたる昆布の味 万作(あまり、いて丁、柚)
薄紅梅恩師のほほのえくぼかな 柚(あまり)
三椏の花や鈍器のごとき波 あまり(いて丁、飛行船、万作、鶉)
天金の書を海に捨つ二月かな 飛行船(あまり、わさび、鶴吉、いて丁)
ぬる燗のぬくさ確かめ春の夜 鶉(鶴吉、万作、柚)

7.
なぞなぞもリボンも解けぬバレンタイン わさび(あまり)
蘖(ひこば)ゆや原始の杉を伝えゆく 柚(あまり・いて丁)
足洗う縁側の先春きたり 鶉(あまり・鶴吉・わさび)
小女子やくの字にされて夜煮らる いて丁(あまり)
積もりおる塵を払えや春一番 万作(あまり・わさび)
晩年のまた一人なり夜の梅 飛行船(あまり・鶴吉・鶉・いて丁)
麗しき君と花菜とコロッケと あまり(柚・飛行船)