第十五回そろり会

1.
一斉落花花一片も追ひ越さず いて丁(あまり)
醍醐寺は太閤の花見続きけり 鶉(あまり)
夜のデッキとは春雷を聞くところ あまり(飛行船・いて丁)
弥生尽告知終えたるガブリエル わさび(あまり・いて丁・鶉)
壷焼きのお尻切れたる苦さかな 万作(あまり)
奥手の子地を踏みしめて遅桜 柚(あまり)
テーブルの皿輝ける復活祭 飛行船(あまり・柚・わさび・鶴吉)

2.
沈丁や香失ひしは我が鼻か いて丁(あまり)
遅桜ながめ故郷に帰る人 あまり(柚・万作)
春の宵ふと道迷ふ坂の上  飛行船(わさび・鶴吉・万作)
山吹の散る花受けて花の散る  万作(柚・鶴吉・鶉)
南国の夢胸に散る貝ボタン  わさび(あまり・万作)
柳江戸の女が立っている  鶉(あまり)

3.
人の呼吸鯉の呼吸や糸櫻 あまり(いて丁)
やがて海原舟形の花筏 いて丁(あまり・柚・鶉)
大川や花の雲間の渡し舟 鶉(あまり)
車窓よりふいに現る遅桜 万作(あまり・鶴吉)
ただ一人青嵐を聴く昼下がり わさび(あまり・いて丁)
思ひ出の貝色あせず廻る春 柚(あまり・わさび・鶉)
片栗の花一輪や武相荘 飛行船(あまり)

4.
貝蒸せば鍋かたかたと春の音 柚(あまり・鶴吉)
麗かや火の見櫓の消防夫 飛行船(鶉・あまり)
君のその白色の手の桜貝 鶉(あまり)
遅桜やむかし女郎屋ありました いて丁(あまり)
犀川や足袋を濡らす苜蓿 万作(あまり)
春陰や花街の女の眉薄し わさび(あまり・万作)

5.
薄墨を流してぼかす花曇り 万作(あまり 飛行船 わさび)
せっかちの庭に咲いてる遅桜 わさび(飛行船 柚 鶴吉)
薄紅の花の蜜吸う雀の子 柚(あまり 飛行船)
猫なれば明日なき春と知るまじく 飛行船(万作 鶴吉)
青貝を砕く男や鳥曇 あまり(いて丁 わさび)
北窓を開き半年振りの庭 鶉(柚)
春の汗して不揃ひの貝釦 いて丁(あまり 飛行船)

6.
膝崩す遅き桜にかこまれて あまり(万作)
桜蘂ふる松本城の青き濠 鶉(あまり)
墨提の舟に乗り込む花衣 万作(あまり、柚)
一日の命咲かせて犬ふぐり 柚(わさび、鶴吉、いて丁、飛行船)
舟遊びピカソの縞のシャツを着る わさび(あまり)
リラの頃カサブランカの旅寝かな 飛行船(あまり、鶉)

7.
春愁を憶えてディズニーランドかな わさび(あまり)
遅桜麻布に多き唐言葉 飛行船(あまり・いて丁)
春愁や古る玻璃窓を透かし見る いて丁(あまり)
ひこばえや石垣の石崩れ落つ 万作(あまり)
銀線の尾の舟進む春の海 柚(あまり・鶉)
馬酔木咲く小道抜ければ母の家 鶉(あまり・鶴吉・柚)
山藤のとほくけぶれる茶粥かな あまり(わさび・万作・飛行船)