第十二回そろり会

1.
春まだき吐息の中の蜃気楼 飛行船(あまり・わさび・いて丁・柚・万作)
里帰り仏間で祈る息白し 柚(あまり・いて丁)
書初めに未曾有と書きし丑年や 鶉(あまり)
鏡餅加賀には加賀の掟あり 万作(あまり・いて丁)
とりあへず靴を磨ひて松飾り わさび(あまり・万作)
冴返る薔薇の名前化粧坂 あまり(飛行船・鶉)

2.
ぐいのみに黒牛の絵や雪もよひ あまり(鶉)
蓮根や穴に去年が落ちている わさび(あまり・いて丁・飛行船)
白絹の無垢にあやかる初荷かな 万作(あまり・柚・わさび)
なつかしき友の集いて実千両 柚(あまり)
生まれてはまた消へてゆく雪だるま 飛行船(あまり・いて丁・わさび)
いつもより多めのとんぼ初芝居 いて丁(あまり)

3.
葱鮪鍋この世の義理と向ひあひ いて丁(あまり 飛行船 柚 鶉 わさび)
双六や牛の歩みで粘り勝ち わさび(あまり 柚)
初日誌まずは寝たりと書きおいて 鶉(万作)
大寒の耳振る牛よ種牛よ あまり(いて丁)

4.
初商い十年一日如しなり 鶉(万作)
一月の炬燵の中の笑い猫 飛行船(わさび いて丁 柚)
読初や牛飼いの歌に印しあり いて丁(あまり)
白梅を心の色に歩きけり あまり(飛行船 いて丁)
寝正月牛のごとくにゆったりと 柚(あまり)
ぐい呑みの縁欠けたるや初便り 万作(あまり)

5.
ぐいのみに酒なみなみと雪女 あまり(いて丁)
鐘聞いて茹ではじめたり晦日蕎麦 柚(あまり)
歌合戦終わる夜更けの静けさや 鶉(あまり・柚)
ぐひ呑みの口の厚さや年の夜 いて丁(あまり・万作)
牛筋を炊いて迎える小正月 万作(あまり・いて丁)
ぐいのみとちょことならんで寝正月 わさび(あまり・柚)

6.
目の見えぬ母の手を取る福寿草 柚(あまり、いて丁)
パンドラの箱のごとくに初みくじ いて丁(飛行船)
初霞久里浜沖のみるく色 鶉(あまり、柚)
まゆ玉やライクアヴァージンゆれにけり わさび(あまり)
永遠は雪のかなたや牛眠る あまり(いて丁、柚)

7.
笹の葉のさやぎにめざめ雪兎 あまり(飛行船・わさび・柚・鶉)
福来ても礼に行かれぬ達磨市 柚(あまり)
一年の出だしはいかに初商 万作(いて丁)
杉の葉の音も嬉しや初竈 鶉(あまり・わさび・万作・いて丁)
しぐるると見えで傘の輪ひろがりぬ 飛行船(鶉)
まあだだよと声響けば山眠る いて丁(飛行船・万作・鶉)
亡き人の女出入りや落椿 わさび(あまり・いて丁・鶉)