第十四回そろり会

1.
春の雨賊草の陰から猫帰る わさび(あまり・万作・いて丁)
地平線火のいろをして鳥交む あまり(飛行船)
蝿生まる痴話喧嘩を聞きつけて 万作(あまり・いて丁)
校門にそっと立ってる青い春 鶉(あまり・柚・わさび)
窓叩く小さな両手豆双葉 柚(あまり・鶉)
春燈のともれど暗き書斎かな 飛行船(あまり)
連れ立ちて蝶は絵本に帰りけり あまり(鶴吉・柚)

2.
春の空飛行物体かき消えぬ 飛行船(あまり)
春菊やテーブルに愛口に歌 鶉(あまり・わさび)
春の雪太郎も次郎も眠れない わさび(あまり・鶉)
恋とげて黒猫二匹寝崩れし あまり(鶴吉)
涅槃絵の嘘泣き顔の羅漢かな いて丁(あまり・万作・飛行船)
進一歩恋猫ほどにはなれぬども 万作(あまり)
暗闇坂登れば春の光あり 柚(あまり・鶉)

3.
絵の中のタンポポとママ笑み溢る 柚(あまり)
春泥やまた落第の夜学生 飛行船(あまり・柚)
そのままに食めと祖母云ふ桜餅 万作(飛行船)
見つめれば眼そらす猫恋終る いて丁(わさび)
絵の教室うまいもへたも春一番 わさび(あまり・いて丁)
やひとりの午後を髪たばね あまり(鶴吉・万作・鶉)
春の空芝生と風と缶ビール 鶉(あまり・鶴吉・柚)

4.
白色のトレンチコートや入社式 鶉(あまり)
おしまいの蛤汁に海を見る 万作(あまり)
飛行士は薔薇と王子を思へりき わさび(鶉・飛行船)
愛されて紙風船は撲たれたり いて丁(あまり・柚)
花びらを散らしてとげむ猫の恋 柚(あまり・万作・いて丁)
風に舞ふ夜の桜を忘れまじ 飛行船(あまり・鶴吉・わさび)

5.
山笑ふ水面に浮かぶ俄か絵師 万作(あまり)
地下鉄の階段の上春の星 柚(あまり)
海荒れて春の夕べの飛行船 あまり(いて丁・鶴吉)
長安男児ありける日永かな 飛行船(あまり)
菜の花や聖は沖の淵より来 いて丁(あまり・わさび・万作)
待ちぼうけるると暮れゆく二重橋 わさび(あまり・万作・柚・鶴吉)

6.
歳月の滑り台乗り春浅し 鶉(あまり)
戻る子に食べさせんとて蜆汁 柚(あまり)
猫族のなほ繁栄す春の宵 飛行船(あまり、いて丁)
三鬼の忌色つき卵喰ふ露人 わさび(あまり、飛行船、万作)
乾きいて蝶のひそめる車窓かな あまり(飛行船)
春眠の午後の耳鳴りゴッホの耳 いて丁(あまり、わさび、鶉、柚)

7.
脳味噌がビクともせずや春の朝 鶉(あまり)
ハムレット悩めるときも猫の恋 わさび(あまり、飛行船)
畦道を小さき車山笑ふ 柚(あまり)
恋猫の猫でいたくて身をなめる いて丁(あまり 鶉 わさび)
かにかくに街はふるさと春埃 飛行船(いて丁 鶴吉 あまり)
竹藪をこへて光るやしゃぼん玉 あまり(柚)