鴨居羊子が描いた桂ゆき
日曜日に掃除していてこの絵を見つけた。香港に行った時、鴨居さんが観光バスの座席から、桂さんを窺いながら描いた絵。二人とも香港に行くとは思わず気軽に誘ったので、初対面同士気が合うかどうか判らなくて私は結構焦った。でもそれは杞憂で、忘れられない楽しい旅だった。ホテルに到着した時、ロビーのショップの青いスパンコールがびっしり付いたワンピースを見て「素敵、」と私はつぶやいた。それでチェックインして、集合時間にフロントに降りたら、もう、その服を鴨居さんが着てニマニマしている。「あんたに買われる前にこうてやった。」と言う。金髪の鴨居さんによく似合っていた。鴨居さんの趣味は関西満開というふうで、東京だと悪趣味スレスレだと思うのだが、それこそが鴨居羊子であり、下着会社「チュニック」だった。会うと必ずハンドバッグから豹柄や虎柄やシマシマのパンツを取り出してくれる。じゃらじゃらした指輪ももらった。私の趣味じゃないけどもらうのが嬉しかった。一方桂さんの趣味はニューヨーク風でさっぱりしていた。美味しいものが好きで、遊びに行くとそのまま外に食事に行ったり、桂さんの煮た野菜を食べたりした。桂さんの庭は時計草が生い茂り、どの草木も桂さん本人のように逞しく育っているのが不思議だった。新宿の真ん中にいるとは思えないのだった。そんな素晴らしいお二人と、旅の間中雨降りだった香港を彷徨ったのが涙が出るほど懐かしい。