梅雨晴れや手に取る本の重さかな

「中古本を陸前高田の本屋さんに送られるそうですね。」という電話取材をY新聞からいただいた。どんな本を送る予定かと問われたが、本屋にはいろんな本があってこそ十人十色の好みに応えられるわけだから傾向は送って下さる方次第と答えた。現地の避難所にはする事が無い年配の方が沢山いるので本は役に立つだろうというお話だった。被災すれば一に食糧二に食糧三四が無くて五に衣服という感じか、わからないけど本は重いし優先順位は低かろう。しかし震災からあと10日ばかりで3ヶ月が経つ。本を手に取る事で少しでも普通の生活に近づければ良いと思う。


後日の話 (文春文庫)

後日の話 (文春文庫)


河野多恵子を読むのはスゴク久しぶり。
下の謎めいた設定に惹かれて読む。 

十七世紀のトスカーナ地方のさる小都市国家で、結婚生活二年にして、思いもかけぬ出来事から処刑されることになった夫に、最後の別れで鼻を噛み切られ、その後を人々の口の端にのぼりながら生きた、一女性についての話である。


どうしたらこんな設定を思いつくのであろうか。読む方はそれでそれでどうなったのと思って読み進むのだ。それで別にどうにもならないの。どんなに驚くべき事が起きても人生は進んで行く。人生を終える為にいろいろな妄想を巡らせても巡らせている間も人生は止まらない。一番印象に残ったのは螺貝のスープの話しで、それまで食べた事の無い螺貝を母親がナマで、茹でて料理法を探す。最後にスープにしてワインをたらしたのとたらさないのを試食して塩味だけのほうを選ぶ。このディテイルがたまらない。人生細部の集積です。