レンコンの穴に去年が落ちていく

 蓮根をおせちに使うのは先が見通せるように、という意味があるのだそうだ。
 「今」は今年だが、来月になると去年になってしまう。今年の「先」は1ヶ月しかない。
一月には、まだ十一ヶ月の未来があるのと比べてみれば、気が焦るのは当然なのだ。こんなことを毎年繰り返して今に至り、今更のように時の経つ早さに驚く。
 来年は創業五十年の節目であるが、何もしなければ五十年だからといって何かが起きるわけではない。
 思い起こせば、創業四十年の時、例年のごとく絵画展を帝国ホテルで開き、その直後にリーマンショックがあり、もう五十年を見るのは無理だと思ったのだ。
それを皆様に支えていただいた。ただただ感謝の気持ちしかない。
 この十年、デフレが解消されることは無く厳しい状況は続いている。代替わりで絵画を手放す人も多い。しかし一枚の繪がお取り扱いさせていただいている作品は、ほぼ百パーセント今を生きて制作している作家の作品だ。今の作家を応援したい、と考えてくださるお客様がたくさんいらっしゃるのは本当にありがたいと思っている。
 さて、五十年を機に新しいスローガンが必要かとも思う。「全国のご家庭に一枚の絵を」「絵のある生活」を長く標榜してきたので、「絵は人生の道しるべ」はどうだろう。今は時代が変化するのが早いので、その時その時の気持ちにぴったりの絵に会えたら買い求めるのがいいと思う。個人的には絵で人生を回想できる実感がある。ということで、私は今月絵を買った。この絵としばらく人生を楽しもうと思う。家の空気も少し変わる。絵に手引される自分探しを皆様と共有したい。「絵は人生の道標」だから。

私が30歳の時に買ったのがシマコの後ろにある絵。