グレゴリー・コルベールの「灰と雪」
お台場というところに初めて行った。レインボーブリッジを渡ると、川むこうに新しい町が出来ていた。
そこに3か月半だけ建てられたノマディック美術館で、カナダ人グレゴリーコルベールの「ashes and snow」という作品が公開されている。少年が象に本を読んでいる写真を、ローレックスの広告でご覧になった方も多いと思う。建物は坂茂設計で152個の貨物コンテナーを組み合わせて出来た大仮設移動美術館。建材はすべてリサイクル資材。会場の中は広く暗く、吹き抜けの天井は高いところで17メートルもある。仕切りのカーテンは100万個のティーバッグを手で押し固めたもの、というのも意表をつく。そして展示された大写真群と映像は見たこともないものであった。それは絵にも描けない映像で、無理に説明すれば、ア二ミズムと旧約聖書と仏様の涅槃図をごちゃごちゃにしてセピア色で再生した、というふうなのだ。動物と人間がすきま無く一緒に生きている様子がリアルに映像になり写真になっている。人間は目を閉じて思いに耽り、動物たちはその人間に無心に寄り添っている。チーターと男の子が一緒に座っているとか、アリクイとバクの赤ちゃんが女性に抱かれているとか、象と男性が深い河のなかで一緒に泳ぎ回っているとか、不思議な光景です。一切の合成とかトリックはないというのが信じられません。動物の警戒心を解くのに時間を費やし15年かけて映像に収めて来た、そして現在も撮影を続けている、というのですから驚異的です。世の中には別の次元で生きている天才がいるのだなーと心底驚きました。この展覧会は、その会場が仮設であること、作品が全てモノクロームであること、声高な主張が無いところ(というところが主張なわけだが)、すべて現代のアンチテーゼとなっているところが人を惹き付けるのだと思う。押さえどころを押さえられちゃって、「ギュッ」と言って帰ってきました。6月24日までです。見て損はない。
(これは先月土砂降りの日に見に行ったのでとても空いていましたが、今頃行くと混んでるかもしれませぬ。夜10時頃までやっているので夕方出かけて、美術館の目の前にある大観覧者にでも乗ると、良いデートコースですよ。)