楽園は星の彼方に鬼やらい


 節分に豆まきをすることもなくなった。
子供の頃は家中の窓と出入口を開け放ち派手に撒いたもので、飼い犬が食べないよう床に這いつくばって豆を拾うのは私の役目だった。
鬼のイメージは怖いより愛嬌が勝っているように思う。なまはげだって子供は怖いかもしれないが大人はみんな笑っている。三鬼さんという父の知り合いは「福は内、鬼も内」というのだった。
 鬼ってなんなのだろう。毎年追い払っても、節分にはちんまり家にいるのだ。つまり鬼は人間が飼っていて、一年で適当に育った鬼は「そろそろ節分ですよ。」「荷物をまとめないといけないですね。」なんていいあうのだ。
 鬼はどこに行くのか。桃太郎のいる地上ではなくて、よその星に行くのだ。
出て行った鬼たちは、その星に寄り添って暮らし、花を植えたりみかんを栽培したりする。「豆はいけませんよ。」「芋にしておきましょう。」「新入りの鬼にはスイートポテトを振舞いましょう。」と平和的なのである。
 そんなこととも知らず、人間は毎年毎年、鬼を育てる。
最近豆まきをしない家が増えたということは由々しきことかもしれない。鬼たちはどんどん増えて、行き場がなくてスマホに住んでいるんじゃないか。それが溢れ出したのが今の世界なのだ。
豆まきしよう。鬼を鬼の星に送り届けてあげよう。


俺らも鬼かもにゃ。