悪童日記

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

読むものが無いと嘆いていたら、Yさんが最近読んだ面白い本の一冊として勧めてくれた。
有名な本なので、昔のものかと思ってたら作者は今70代、第2次世界大戦の頃に設定された物語だった。生まれてから、会ったことも無かった祖母の所に双子の少年が預けられる。母親と不仲であった祖母は二人に辛く当たるが、二人は強い意志を持って世の中を学んで行く。祖母は社会のアレゴリーであろう。一種のビルディングロマンス。その学び方は徹底した経験主義である。ひもじくて物乞いする脱走兵に会えば、3日間食べずにひもじさを学ぶ。物乞いに出かけて、それがどーいう気持ちになるものかを知る。いじめられれば二人で打ちのめしあう。ののしられれば、二人でお互いを傷つかなくなるまでののしりあう。双子の日記にはルールがあって、客観的事実しか書かない。例えば「栗を沢山もらった」と書いても「美味しい栗をもらった。」とは書かない。美味しいと思うのは主観であるから。読み終わって不思議な後味が残る。突き放した非情と言えばいいのだろうか。しかし物乞いをした時に、もらった金やモノは投げ捨てるのだが、一人の女性が「私は何も無いので、あげることが出来ないわ。」といって頭を撫でた、その手を捨てることは出来ない、と記述する部分に考えさせられる。好き嫌いで多くのことが終わっているのが今の時代ではなかろうか?もう少し客観を学び直す必要があるかもしれない。