春眠や夢哀しくて猫を抱く

乳白色に光る駅のホームで電車を待っている。鞄を遠くのベンチに置いていて、電車が近づいてくるから取りに行くのだが、全力で走っても間に合わない。乳白色の電車に乳白色の人々が乗り込んで行って、私はホームに取り残される。乳白色のトンネルが電車がやってきた方向に、ずーっと続いている。昔の駅は、こんなふうではなかった。線路には鉄色の砂利が敷かれて、ホームには雑然と様々な服を来た人がひしめいていたのに、こんなに何もかもきれいになっちゃって、使い古した私の鞄だけが、ホームに茶色く沈み込んでいる。電車をあきらめて、駅の前でタクシーに乗り、お金を持っていないことに気づく。クレジットカードが使えるか英語で聞くと「もちろん」と運転手がフランス語で答える。そこで目が覚めた。ぼーっとして今見た夢を辿る。未来から眺めた風景みたいだった。そう思うと人生は、色がどんどん薄くなる一本のトンネルみたいだなー、なんだか寂しい気持ちがして、黒い奴を撫でた。ゴロゴロいってうれしかった。