帯の話2

万馬券 近所の着物屋さん 母の遺品

この三つが無かったら私の着物狂いはなかったわ。20年ほど前、あ〜バブルの真っ盛り、競馬にはまっておりました。その頃買った千円の馬券が当たって50万円くらいになりました。近所にある着物屋さん、こんなところでどうやってやっていけるのか、ズーッと不思議に思っていた店の前を通り過ぎようとして足が釘付けに。その「大」の字を染めた帯に吸い寄せられるようにそのお店のドアをくぐりました。それがこの写真の帯です。値段は当たり馬券よりちょっと高かったけど買いました。それに合う着物なんか持ってなかったので着物も作りました。その時の買い物は、今に至るまで私の着物に関する支出の一番高いものでありました。豆まきに着ていった時、父が「いい帯している女が居ると思ったら、なんだお前か。」と言われました。そんなに夢中になって買っても、頻繁に着物を着るには至りませんでしたが、その伊兵衛という店には、魅力的な高林さんと仰る店主がいらしてお話聞くのも楽しかったのです。その後有名店だということがわかりましたが、母の着物も沢山ここで仕立て直してもらいました。その伊兵衛も昨年暮れに閉店になりました。つまんない。

  添田敏子さんの帯。