きものと年齢

 着物のとき、地下鉄で席を譲られた話は前に書いた。先日同じく地下鉄で、私より一回りは年下と思われる着物の女性が電車に乗って来た時、思わず立ち上がって席を譲りそうになって心の中で苦笑した。着物姿は今の時代やはり特異であることは否めないような気がする。腰を浮かせた私は、瞬間的に異なった時代の人が、大正の人が交じり込んで来たような気がしたのだ。それほど着物のメッセージが強いということでもあろう。3年ほど前にも山手線で、若い女性が勢いよく立ち上がって「どうぞ」と着物の私に言ってくれたことがあった。私はたいそう驚いて、連れと話もしていたので断ったのだが、その女性が隣の友人と「折角なんだから座ればいいのにねー。」とネイティブな英語で話してるのを聞いて、「あー、悪かったな。」と思ったものだった。着物の人を庇護しようという気持ちは、どうも自然に備わっているのかもしれない。これからはどんどん譲られよ〜っと。