第十一回そろり会

1.
折れそうな心励ます冬桜 柚(あまり)
鏡より夜となり卓の冬林檎 あまり(いて丁・飛行船・鶉)
侘助やたれに遠慮で猪口に咲く わさび(いて丁)
大雪や雪なき街の夕まぐれ 飛行船(あまり・わさび)
しきしまのやまとのいろは散紅葉 いて丁(あまり・柚・万作)
父祖の住む里静やかに除夜の鐘 鶉(あまり)
根性無しと云われようが河豚白子 万作(あまり)

2.
侘助の一輪で咲く強さかな いて丁(あまり・飛行船)
横町の声のどかなり冬日射す 柚(あまり)
何もかもそぎ落してや年の暮れ 鶉(あまり・万作・柚・いて丁)
侘助の程度に笑い話せれば 万作(鶉)

3.
凍蝶の淡き野心を君しるや わさび(あまり)
年の瀬や天気予報は外れがち 飛行船(あまり)
褞袍着るここは港区六本木 鶉(あまり)
低き雲雨よりましと鰤起し 万作(あまり)
侘助やこのたびのこと忘れたき いて丁(万作・鶉・柚・飛行船・あまり)
売られをる毛皮の艶を悲しめり あまり(わさび・いて丁)

4.
茶の花も樹の花も君在ればこそ あまり(わさび・万作)
欠片をつなぎあわせて雪女 わさび(いて丁・飛行船・鶉)
終電の尾灯遠のく年の暮 飛行船(あまり・いて丁)
夜半の冬何を伝えん放浪記 鶉(あまり)
鰭酒の甘みに溶けし京ことば 万作(あまり・柚)

5.
歳晩や欠礼の人かぞへをる いて丁(あまり)
寄り添いてみな傾けり枯芒 柚(飛行船)
猩々木の緋が目印や能の家 あまり(いて丁・わさび)
侘助やひとえまぶたに紅をひき わさび(あまり)
深き川静かに流れ小晦日 飛行船(あまり・鶉)
ベツレヘム聖者の街の砂埃 鶉(あまり)
水仙のただ一花で香りたる 万作(あまり・飛行船・柚・わさび)

6.
大寺のほとけの手より冬の雨 いて丁(あまり・わさび・万作・鶉)
我が声をとほくに放ちポインセチア あまり(万作・鶉)
毛糸玉猫と取り合う昼下がり 柚(あまり)
町はずれ夫婦だまって食ふおでん わさび(あまり)
邯鄲の夢さめやらず蜜柑食ふ 飛行船(万作)
誂えのしつけ残して年の暮れ 万作(あまり・柚)

7.
暮れ易し旅路のはてのみそかごと いて丁(あまり)
討ち入りの日のモーニングセットかな あまり(鶉・いて丁・飛行船)
絵心を俳句に託し年を越す わさび(あまり)
侘助や朱の奥にある紺の色 飛行船(わさび・あまり)
南天も野良に生えれば雀の巣 鶉(いて丁)
裏ネルの温さ嬉しや別珍足袋 万作(柚)