第三回 句会 2008.4.9
1
飼い猫の妻に似てくる四月馬鹿 飛行船(あまり)
年波の寄せては返す彼岸かな わさび(あまり・鶉)
つばめ来る田起こし終わる空の上 鶉(あまり・わさび)
言の葉にいささか棘や春の暮 あまり(いて丁・まんさく・柚・わさび)
桜咲く待ち焦がれたか人も咲く まんさく(あまり)
花冷えや身の上話をひそと聞く いて丁(柚・飛行船・鶉)
薄情な雨散らしおり白木蓮 柚(あまり)
2
金星に巨大な眼あり葱坊主 いて丁(あまり)
春の陽に羽織入れ替え薄物に まんさく(あまり)
団体様ご到着です目白かな わさび(あまり)
桜咲けば桜色の闇押し寄せり 飛行船(あまり・わさび)
人絶えて花冷えの町夜が来る 鶉(まんさく・あまり)
花冷えのピン落ちてゐる乱れ籠 あまり(いて丁・飛行船・まんさく・鶉)
3
飽きるまで口開く鯉日永し いて丁(飛行船・鶉・柚・わさび)
花冷えや薄墨の花も震えけり 柚(あまり)
芹を摘む少年の日の小川かな 飛行船(あまり・いて丁・わさび)
モジリアニ花冷えた眼を残しけり わさび(あまり・いて丁・柚)
橋渡り見知らぬ街で会う桜 鶉(あまり)
男に酒女にしんとうぐいす餅 あまり(まんさく)
4
春の鯉ぬらりと水を持ち上ぐる いて丁(あまり・飛行船・柚・鶉)
朧月遊体離脱してみたし わさび(あまり・飛行船・いて丁)
青ぬたになぜか受け継ぐ母の味 鶉(あまり)
さやのこげ蒸されてうまし空豆や まんさく(あまり)
5
蚕豆の鞘を剥くれば福並び 柚(鶉)
漆黒の闇匂い立つ沈丁花 飛行船(あまり・いて丁・まんさく)
蒸し鰈薄皮指にはりつきぬ わさび(あまり)
八重二十重花の運河の如し山 鶉(まんさく)
春そこに模型の船の薄埃 あまり(わさび・柚・飛行船・鶉)
6
春の闇五体投地のダンサー起つ いて丁(あまり)
和紙巻いて微笑み包む雛納め 柚(あまり)
花冷えに妻の掌包む昼下がり 飛行船(柚・わさび)
友の嘘独活の苦さのほどなれど わさび(あまり・いて丁・まんさく・鶉)
春霞水平線をかくしたり 鶉(あまり・飛行船)
星になりたきみちのくの葱坊主 あまり(柚・いて丁・飛行船・鶉)
春嵐打ち捨てられし傘の山 まんさく(あまり)
7
街かすみ陽はやさしくも花冷える まんさく(あまり)
白木蓮(はくれん)の爛れてこぼる気の重さ いて丁(あまり・まんさく・鶉)
手みやげの箱開けぬとも桜餅 柚(あまり・飛行船・いて丁)
永き日を猫膝に来て動かざる 飛行船(あまり・柚)
夜桜や座敷わらしも外を見る わさび(あまり)
さよならを聞かせるように散る桜 鶉(あまり・柚)
もたれあふことなく折れて葱坊主 あまり(飛行船・まんさく・いて丁・わさび)