青森県立美術館


 本州では最後に出来た県立美術館と聞きました。三内丸山遺跡に隣接した真っ白な建物です。
呼び物はシャガールが描いたバレーの「アレコ」舞台背景。三点で十五億円。延び延びになった開館までの数年間、倉庫保管料が年一億かかったとか,レゾネに出ていないとか、話題に事欠きません。
 美術館の入口は地下2階。常設展示場に入ってすぐ「アレコ」展示室です。美術館の2フロアー分の吹き抜け3方に堂々と掛けられているのは壮観です。一点が10メートルX15メートルほどもあるのです。シャガールのモチーフが万遍なく散りばめられた大作です。つまり恋人たち、リラの花束、道化の熊、空飛ぶ馬、ロシアの町並み、などです。開館と同時に入ったので他に人もいなく、椅子に座ってゆっくり美しい色彩を堪能しました。これだけ大きいとそれだけでも価値があるような気がします。やはり自分の目で見ることが大切です。
そこからはすぐ奈良美智コーナー。小屋の中に少女が俯せで眠っている。それを沢山ある覗き穴から覗く趣向です。奈良美智って「コワイ顔の子」の絵と思っていましたが、暗いんですね。そしてそのベクトルは寺山修司に似ていると。もちろん展示の側にその意図があるのでしょう。半身が地中に埋まっている白い巨大な「あおもり犬」のオブジェの前を通って寺山修司のコーナーに続きます。
「マッチ摺るつかのまの海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」の切り文字がインスタレーション風に下がっています。それにしてもこの歌は忘れがたい歌です。私のような甘ちゃんのノンポリでもグサッと来る問いかけです。そして棟方志功。青森としてこの人を外すことは出来ません。そのわりにはボリューム不足です。無い物ねだりですが、志功が生きていたらアレコくらいの大きさの作品を作ってほしかった。そしたらシャガールよりずーっと素晴らしかったことでしょう。
 その他、小さく分かれた小間で数種類の展示がありました。斉藤真一の瞽女シリーズ。青森出身の国画会作家3人展。恩地孝四郎と関野準一郎。今和次郎アヴァンギャルド、沢田恭一の写真。覚えているだけでもそのくらいありました。沢山表情があって、いろいろな展覧会をまとめて見ているようで楽しかった。
 青森に行ったらこの美術館と三内丸山遺跡は必見でしょう。この両者を「縄文」というキーワードで結ぶと、長ーい時の流れが透けて見えるように思いました。