長雨やモノクロームの海の家


 萬鐵五郎の展覧会を逗子の美術館でやっている。
萬好きだけど、遠いな〜、と思っていたら、句友の日本画の先生が絶賛しているので、行ってきた。

充実した内容でたくさん発見があった。

「裸体美人」草の上に寝転がる赤い腰巻の女性像、有名な絵なのでご存知の方が多いと思う。
畳一枚ほどある絵の横に、4号くらいの下絵がかかっていた。その下絵が、そのまま本画にすれば、たいへん正統的な西洋美女になると思われるバランスなのだった。それをあえて手は短く胴は長く、顔もエラが張って鼻の穴を強調した絵に仕上げているのだ。上手い人だから、西欧絵画を学んで美女を描くことはいくらでもできたはずだが、彼は彼の道を行ったのだ。

 自画像もたくさんあって、存分にデフォルメしている。その一つ一つが叫びだしそうだった。

 そして故郷に帰って二年足らずの間に描いたダークチョコレート色の静物画の美しいこと。これは図版でしか見たことがなったのだが、20号くらいの大きな絵の連作で茶色って綺麗だとしみじみ思った。

「仁丹」と描かれた夜の絵、ぼーっと立っている街灯。電気の傘の下でにっと笑っている女の掛け軸、好みであった。

 喜雨せんせ、ありがとうございました。実物の持つ情報量には、どんな写真も及びませんね。
逗子は遠いけど、オルセーより近かったでした。

美術館の下は一色海岸で、泳いでる人も見えたが、書き入れ時に長雨で大変だと思った。