樟脳の匂う雛に薄日さし


一般的に雛人形を見て欲しいとは思わない。私の知らない時間を生きてきた感じが怖い。
子供の時、親が買ってくれたお雛様を可愛いと思っていたかしら。思い出すのは、手を欠いた部分の露出した灰色の生地なのだ。毎年それがかわいそうだと思っていた。所有と愛着はセットだ。所有しても愛せないものは問題だ。
母は、旅行の度にちまちました人形を買ってきて、ガラスケースにぎっちり入っていた。母亡き後、少しずつもらってくれる人を探し切るのに苦労した。
もともと人形があまり好きじゃない。人形遊びの思い出も希薄だ。
人間もそんなに好きじゃないかも。


動物は好き。