赤目四十八瀧心中未遂かな

赤目四十八瀧心中未遂

赤目四十八瀧心中未遂

面白かった。
東京の会社勤めを辞めて、尼崎の安アパートに流れ着き朝から晩まで臓物を串に刺す男。同じアパートには刺青師と子供その愛人が住んでいる。毎日串刺しの材料を持ってくる男、それを店で売る老婆、場末で生きる人々の中でどんなに身を潜めても、男の存在は浮き上がって見える。ある日、刺青師の愛人が彼に身を任せたことで、人間関係は緊張を孕んでくる。道行きは題名のとおり未遂となるのだが、所詮違う世界の人間、ラストが哀切だ。読み終わってアメリカ映画の「旅情」を思い出した。電車での別れのせいなんだけど、人間の結界をやすやすと越えられるのは性愛だけかもしれない。男と女がいなければ世界の流動性はうんと低くなるだろうなー、と思いました。