油照り土俵の土もひび割れむ

 お相撲との付き合いは長い。
納屋こと後の大鵬関が、二所ノ関部屋に入門した時から父はタニマチであった。それからもう50年以上になる。
この5月には親方の古希と文化功労賞と荒川名誉区民のお祝いが盛大にあった。そして一月たたぬうちに今回の事件である。
大嶽親方は大鵬関の婿だから、とても他人事とは思えない。大嶽親方が貴闘力といった頃、大鵬部屋の出稽古で張り切って相撲を取っていたのが昨日の事のように思い出される。父が生きていたらなんと言うだろうと、ずーっと考えている。
 相撲は興行だから、いろいろな付き合いがあるに決まっている。その中に暴力団がいたって驚かない。勿論そんな関係はいつかどうにかしなくてはいけない事で、そのいつか、が今だと思い定めて取り組むしかない。
しかし相撲取りが暴力団とツルんで八百長相撲を取れば、それは立派な犯罪だが、今回の事件で、賭けた力士は被害者の面もあるのじゃないだろうか?賭け麻雀、賭けゴルフ、競輪競馬、パチンコ皆やっているではないか。相撲部屋に出入りしているマスコミ関係者は全く関係ないのだろうか。それが事態がこーいうふうになると、名前が挙がった人間だけを水に落ちた犬を叩くように追いつめる。名古屋場所の中継は中止となり、大嶽、琴光喜は追放となって一件落着なのであろうか。それでは蜥蜴の尻尾切りではないか。音無の構えの横綱審議委員会はなんなのだ。どうして今まで相撲に関わっていた人間が真剣に考えないのだ。このままでは何か別の裏があるように見える。急に寄せ集めた審査会のようなものに身を委ねては、ファンに申し訳ないと思わないのか。
 賭博が暴力団の資金源である事が問題なのはとうの昔から判っている。それをなんとかするのは、国の仕事である。根っ子の部分はそのままにしておいて相撲取りにだけ反省を求めるのは酷だと思う。全ての賭け事を国営化するか、許認可事業にすれば良い。イギリスのブックメーカーがお手本になるのではないか。清濁合わせ飲めない時代である。政府関係者はこれを期に、国民が賭け事で身を滅ぼさぬために議論すべきだ。
 それはともかく、相撲界はこのまま人の噂も七十五日とだんまりを決め込んでもナンの解決にもならない。まず公益法人格をいったん棚上げにして、3年くらいかけて全国の神社で奉納相撲を取り、老人介護施設などでボランティアをし、それを禊として、国技として再出発してはどうだろうか。歌舞伎役者でも野球の選手でも普段は普通の現代人である。力士は違う。24時間髷を結い着物を来て生活している。相撲は過去からタイムカプセルに乗って来たような力士という素晴らしいプレイヤーで成り立っている。この相撲が光を失わぬ事を切に願う。

大鵬関は今は納屋と元の名前に戻っていますが、大鵬の名前を使わせていただきました。)


会社の社報に載せたものです。ほんとに これからどーする大相撲 だわ。