梅雨入りや今亡き友を思ひ出す
くせ毛なので梅雨になると髪の毛が収まらない。家を出る二十分ほど前にカーラーを巻き付けている私に夫が、そんなもんできれいになるの、と聞くので、気休め、と答える。
高校の修学旅行は京都だった。明日は大雨の予報の前夜、隣の布団の級友が丁寧にカーラーを巻いている。「明日雨だから、巻いてもとれちゃうわよ。」「巻いてとれるのと、初めから巻かないのとは違うのよ。」。私は何度この会話を思い出したことだろう。若いときは実際的に、年をとってからは人生の心構えとして。何が起ころうとも毎日のことをきちんとしなくてはいけない。たとえ明日死ぬとしても。特別親しかったわけではないが名前の並びが近かった彼女は、風の便りで早死にしたと聞いた。未だに毎日髪を巻けない私だけど、タナカさん一生忘れないわ。