第十七回そろり会

1.
北斎が見つけし夏の赤富士や 鶉(あまり・鶴吉・わさび)
逢ひにゆく翼のほしきサングラス あまり(わさび・鶉)
長雨に耐へて白及(しらん)の咲きにけり 飛行船(あまり)
ふて寝して湿る畳や蝿叩 万作(あまり・柚)
酒くさき健康談義明易し いて丁(あまり)
月の出や生まれて死ぬる水母かな わさび(あまり・鶴吉・万作)
少年の目を合わさざり青簾 柚(あまり・いて丁)

2.
物売りの音だけ聞いて古簾 いて丁(あまり・わさび・鶴吉・柚・鶉)
逢魔が時海月つらなる佐渡おけさ わさび(あまり)
十薬や好きな女の耳飾り 飛行船(あまり)
草笛や鳴らぬは口の悪しきため 万作(あまり)
聖痕もみえぬくらさや燭涼し あまり(飛行船・わさび・いて丁)
窓の席雨音近く梅雨の入り 鶉(あまり)

3.
鬼百合や美しき人は交はらず いて丁(飛行船)
席立って涼しき顔の飛行船 あまり(鶉)
黒南風やぽつりぽつりと苔ひらく わさび(あまり)
ラムネ玉うばひ合う子や日曜日 鶉(あまり・万作)
今日の厄ぞろりと落とし夏の帯 万作(あまり・鶴吉・鶉・柚・わさび)
猫の子のまだ届かざる青簾 飛行船(あまり・鶴吉・わさび)

4.
あをあをと寄せくる波や夕海月 あまり(鶴吉)
われ海月光放ちてここにあり 柚(あまり・わさび・鶴吉・いて丁・万作)
書を抱き夏至の日海へ旅に出る 鶉(あまり・柚・飛行船)
席あぶれ縁側で食ふ氷菓子 万作(あまり)
浴衣着て脚もてあます桟敷席 わさび(あまり)
心太ひと口海を頬張りぬ 飛行船(万作)

5.
不定形の猫眠りつつ夏に入る 飛行船(あまり・鶉)
空蝉のなかも強風注意報 あまり(いて丁)
気ばかりが焦り道ゆく草いきれ 柚(あまり・鶴吉)
青簾葡萄の葉濃し田舎屋よ 鶉(あまり)
三越や夏の暖簾を割にけり いて丁(あまり)
うすものや愛想尽かしをはらみつつ わさび(万作・あまり)
夕暮れの風の匂ひにすだれ巻く 万作(あまり・鶉・鶴吉)

6.
世界病んで水母発生注意報 いて丁(あまり・飛行船)
駆け落ちの日の遠のきし青簾 あまり(飛行船・万作・いて丁・わさび・柚・鶴吉)
眠りなきわが眼の悪魔半夏生 飛行船(いて丁・あまり)
棄てられし水母を竿で突きし子ら 万作(あまり)
ゼラニウム友亡き今日も咲きにけり 柚(飛行船・鶴吉・あまり)
猫が鳴く真珠色の雲見上げつつ 鶉(あまり・飛行船)

7.
葉の裏の特等席のかたつむり 飛行船(あまり・いて丁・鶴吉・柚)
空と海墨流したる走り梅雨 柚(あまり・鶴吉・万作)
梅雨闇鉄錆臭の充満す いて丁(鶉)
探せども日傘は去年に置き忘れ わさび(あまり・鶴吉)