還暦や知らぬ事知る面白さ


神戸・続神戸・俳愚伝 (講談社文芸文庫)

神戸・続神戸・俳愚伝 (講談社文芸文庫)


 長年前を素通りしていた食堂に、ある日ふと入ってみたら、好きそうなメニューが山ほどあって驚いた、というのが私と俳句の関係のようである。西東三鬼という人も知らないメニューであったが、この本スゴク面白かった。典型的無頼派の女たらしみたいだが、書きかたが素直でぜんぜんイヤな感じがしない。シンガポールで歯医者をしていたという経歴のせいかな。神戸のホテルに居続けて、そこのマネージャーやバーの女性、それを取り巻く人々のことを書いた短編集。戦前の日本は面白そう。「おそるべき君らの乳房夏きたる」って、この人の句だったんだ。