富士日記 折にふれては読み返す

 私が留守の時、ニャーニャー騒がしいので、見るとビトンがまるまる太った雀をくわえていたそうな。捕まえようとした夫に「フーッ」といったはずみに、雀を取り落とし、気絶していたらしい雀は、元気に窓から飛んでいきましたとさ。その後の2匹の不満ぶりはすごかったようです。獲物を取り上げちゃいけない。「性格が曲がるから。」って武田泰淳が、奥さんの百合子さんに言う場面が「富士日記」にあったと思う。でも、見過ごすのも難しいわね。今時は雀が繁殖期でピーチクパーチク家の欅の木で飛び回っているので、それをキャッチしたのだろう。また捕まえてきたら、どうすればよいのでしょう?

武田百合子富士日記。河口湖畔の別荘での毎日。夫泰淳に「日記をつけろ。食べたものだけでいい。」と言われて書き始めたそうだが、素晴らしい書き手であったことは読み出せばすぐ判る。素直で飾らない文章。ユーモアと観察力。この本を、まだ読んでいない人羨ましい。

富士日記〈上〉 (中公文庫)

富士日記〈上〉 (中公文庫)

富士日記〈中〉 (中公文庫)

富士日記〈中〉 (中公文庫)

富士日記〈下〉 (中公文庫)

富士日記〈下〉 (中公文庫)