句会 2008.02.21

1.
雪残る 垣根をのぞむ 紅梅花 柚(あまり・まんさく)
髪抜けて 慈姑の如き 女房かな 飛行船(あまり)
雪吊りの 松をうらやむ 寒椿 まんさく(あまり・柚)
恋の猫 ひとりもだえる 春の夜 鶉(いて丁・飛行船)
日向ぼこ 猫と並んで 丸くなり 柚(あまり)
蕗茹でる 茎の青さや めぐる春 柚(あまり・いて丁)

2.
鳥の恋 みてゐてふっと しゃっくりこ あまり(いて丁・鶉)
餅ふくれ 火鉢囲みし 時思う 柚(あまり)
球音が ひびく浜辺を 父と行く 鶉(あまり・わさび・柚)
春おぼろ 遠き故人と すれ違う 飛行船(あまり)
鴎飛ぶ 佃小橋の 空四角 いて丁(あまり・柚・まんさく)
紀元節 あくび黒猫 窓の下 鶉(あまり・飛行船・まんさく)

3.
ウルビノの ヴィナスのおなか 春来る わさび(あまり・いて丁)
雪の上 鬼は逃げたか 豆のかす 柚(あまり・飛行船・まんさく)
おでん食ふ 出向辞令を 懐に いて丁(わさび・鶉)
春の波 さんごの音が しゃらしゃらと 鶉(あまり)
猫どもが 光る日向や 初詣 わさび(あまり)
寒ければ 簾はあげず 香炉峰 飛行船(あまり・いて丁)
豆をまく まけどもまけども 鬼は内 わさび(あまり・鶉)

4.
ふる里の 訛り嬉しや 初電話 まんさく(あまり)
冬の夜 手袋くれし ひとは亡き わさび(あまり)
成人を 迎えし君に 笑み浮かぶ まんさく(あまり)
のどぐろの 喉の暗きを 残したり いて丁(あまり)
赤蕪を はむ妻の 歯の白さかな 飛行船(あまり・いて丁・わさび)
太陽の 黄色を咲かせ クロッカス 鶉(あまり)

5.
ものを言ふ ときの寒さよ スニーカー あまり(飛行船)
寒染めに 色冴えわたる 紅の色 まんさく(柚)
そぞろ神 はやも憑きたる 春ショール あまり(鶉)
凍蝶の 肩に止まりて うごかざる いて丁(柚・飛行船)
熱燗に ふれてつまみし 猫の耳 飛行船(あまり)
冬の旅 トンネルごとに 川端康成 わさび(飛行船)

6.
雨の夜は 雛の生ひ立ち 聞きたしよ あまり(鶉)
雪降りて 菜洗う指の 凍えけり 柚(あまり)
浅雪を ちりとりでかき 郷慕う まんさく(あまり)
吾にかはり 稿書きくれよ 男雛 あまり(まんさく)
酔い醒めて 天気予報の 雪を待つ いて丁(あまり)
葱白し 一寸ごとに きざまれて 飛行船(あまり・わさび)

7.
濁り酒 五臓六腑に 百八つ わさび(あまり・鶉)
口切りを 買いに寺町 一保堂 飛行船(あまり・わさび・いて丁)
春眠に 大河ドラマの 如き夢 鶉(あまり)
梅の花 再開発の 街に咲く 鶉(あまり)
鉄骨に 人の声して 春の闇 あまり(鶉)
雪降った 後の青空 清々し 柚(あまり)