Ilf Museum
長野県岡谷市の笠原書店さんに伺った帰り、「イルフ童画館」に行く。ここは童画家武井武雄(1894〜1983)の生地なのだ。武井武雄という名前の知名度は、どのくらいあるのだろう。私が子供の頃はいろんな雑誌や絵本で見た。「青のっぽ赤のっぽ」という、鬼が主役の漫画を、覚えている方もいらっしゃるだろう。独特のアールデコ様式の絵で、子供の時はあまり好きになれなかった。でも、その強い個性故に、記憶の中に生き続けていた。イルフとは、古いをさかさまから読んだ、武井の造語で、彼が作ったイルフトイズと名付けられた、玩具、トランプ、カルタなどが残されている。イルフなんて響きがかわいくてお洒落だが、美術館は、3階建てピンクの外観の立派な建物で、武井の作品から受けるイメージからは、ちょっと違和感がある。そこまで送ってくださった方も「赤い屋根かなんかの洋館だと良かったんだけど..」とつぶやいていらしたが、同感だ。館内は2,3階が展示室。素晴らしいのは、物語、挿画、装丁の総てを、武井が創り、300名の「親戚」と彼が呼んだ会員にだけ頒布した「刊本」と呼ばれる小冊子。挿絵を全部刺繍したものとか(文章もです!)、螺鈿したもの、ワラで編み込んだもの、まー凝りまくった冊子を193冊も作ったのだ。一部分しか展示されていないが、さぞや作者は楽しかっただろうと思うし、その尽きないアイディアに脱帽する。
いつも思うことだが、大正時代から昭和初期の作品は楽しい。アカデミズムと離れたところで、イキイキとした作品が自由に活躍したように見える。芹沢けい介にも似てるなー、と思って調べたら武井が一年早く生まれていて、同じ歳で亡くなっている。鈴木信太郎、川上澄生も芹沢と同年生まれだ。時代の生み出すものは、確かにあって、それをコンテンポラリーと云うのだ、と思ったことだった。
とても気に入った女の子の銅版画があって、これはそのマネです。