雲南の妻


週末、村田喜代子雲南の妻」を読む。あ〜久しぶりに好みの小説を読んだ気がする。長くなくて作家独自の世界に引きずり込んでくれる本が好きなのだ。
 20年くらい前の中国雲南。一番近い昏明の空港まで、車で10時間もかかる時代。主人公敦子の夫は、藍染めと希少なお茶の輸入に飛び回る商社マン。その通訳の若い女性との一般的ではない三角関係。湿度の高い密林の匂いのなかで熟成していく女性同士の愛情が、自然なこととして納得のいく描写になっている。中国茶の神秘、山奥で作られる藍瓶の描写などコクがあってうっとり。作者は現地に行ったわけでもなく、完全なフィクションだというのもいいなー。
 私は10年前、父に付いて夫と北京に行った。人民日報の招待旅行という名目になっていて最終日は雲南料理だった。それを中国側の人たちはスゴク楽しみにしていた。レストランの席についてまず「乾杯」。なにげなくテーブルの向こうに目をやると、ボーイが蛇を握って首を切っている。だらんと伸びたその血を杯にそそぐ。いやー、あんなにあせったことは無い。書いていてもまだコワイ。その瞬間から私は飲まず食わずとなり、周りは見たくないので、隣の人民日報の人がくれた彼の書の展覧会のカタログを食い入るように見続けた。あんなにじっくり書を見たことは無い。それ以来、雲南→ヘビ→こわい、と整理されているのだが、この本はホントに好き。