正月休み

 お正月は東京に居ないつもりだったがなんだか億劫になって家で過ごした。
近所の神社に初詣に行って帰りに元旦から開いてる本屋に寄る。最近本屋の店頭もずいぶん様変わりしたように思う。How to本ばかりで目に飛び込んでくる本がない。その中でキラッと光ったのが米原万里の「打ちのめされるようなすごい本」という書評集。帰って一気に読んだ。出てくる本の半分以上は聞いたこともないし多分今後も読まないであろう本ばかりなのだが、その書評が素晴らしく面白い。筆者はロシア語同時通訳第一人者だっただけあって、その本のジャンルはロシア、東欧圏に関するもの、社会主義に関するものが多い。その書評の一つ一つが目から鱗の知識を与えてくれる。ヒットラー菜食主義者だったなんて知らなかった。
 彼女は6年間プラハの学校に行き日本に帰って高校に入学したら教科書のあまりのつまらなさに絶望したという。それで明治までの歴史は司馬遼太郎の本、その後はいろいろな書物を乱読して日本史を頭に入れたという。そう、司馬遼太郎に歴史の教科書を書いてもらえば良かったのよねー、と共感する。プラハでは教科書が面白いので全生徒が新学期が始まってすぐに読み終えてしまうという、文部科学省はよく読んでもらいたい。私など日本史といえば即頭に浮かぶのは縄文土器弥生土器の写真だもんね。
 それにしても一日に7冊のペースで本を読むというのはスゴイ。それくらい速読でなくては同時通訳はできないのかもしれないが、頭が下がる。その彼女は昨年5月卵巣がんで亡くなった。それこそがんと判ってからありとあらゆる本を読みいろいろな代替治療を受ける。最後に「効く人もいるのだろうが私には逆効果だった。」と結ばれた文が絶筆になったのはなんとも悲しい。アメリカ一辺倒の知識人が多い日本で本当に貴重な人だったのに。私より一つ年下。メメントモリとしみじみした。