死んで花実が咲くものか

 子供を持っていないので子育てを語る資格は無いと考えているが、最近の「いじめ」問題はひどすぎる。いじめは多かれ少なかれ人間社会にはあるものだからそれを根絶することは出来ない。その現実を踏まえたうえで対策が取れられているようには到底思えない。いじめられたら自殺する、という選択肢を、これでもかこれでもかと報道することが、追いつめられた気持ちになっている子供たちの背中を自殺へと追いやっているように見える。学校でいじめられていると分かったら親は何故休ませないのだろう。いじめられる学校に行くくらいなら、事態が好転するまで、休学したって留年したっていいじゃないか。先は長いのだ。「美しい国」なんて抽象的なことを言ってる場合ではない。「死んで花実が咲くものか」である。
 学校って私はあんまり好きじゃなかった。今若返らせてくれる、と言う魔法使いが来てくれたとして20歳前には戻してほしくない。しかし学生時代というモラトリアムの時間は大事だと思う。あの長かった毎日、長かった一年は懐かしい。その時間が人を育てると思う。それに較べると今の子供たちは忙しすぎるのではないか?子供が携帯を持って塾に行くなんて変じゃありませんか。暇なときはゲームだし、生きていく術はどこで学ぶんだ。それはやっぱり家で学ぶのだ。掃除、洗濯、整理整頓、挨拶、調理。だめな親であっても反面教師にはなれる。朝起きてから床につくまで、人生、基本はこれの繰り返しなのだ。これがきちんと出来れば大学なんかに行かなくても上等な人間になれる。 
 話は飛ぶが先日呉服屋さんのパーティーで社長が挨拶された。当日、金沢から先代であるご両親も見えていた。型通りの、皆さんのおかげでここまで来れたというスピーチだったが、最後に「いいお客さま、お取引き先に恵まれて幸せです。生んでくれてありがとう。」と締められた。わたしはちょっと胸を突かれた。親としてこれくらいうれしい言葉はないに違いない。残念なことに、私は言わなかった。親が健在な皆さん、手遅れにならないうちに言ってあげて下さい。さもないと後悔しますよ。そして子育てしている親の皆さんは、そう言ってもらえるのを励みに、子供を育てるべきだと思う師走でございます。