逃げ水を追ってはならぬと言われても


20世紀初頭、風景画を描く夫と、人物画を描く妻。
ある日モデルが来ないので、夫に代わりを頼む妻。
絹の靴下と金のヒールの靴を履いて、夫は自分の女性性に目覚める。

世界で初めて性転換手術を受けた男性の手記を元にした映画だ。
丁寧に作られていて、キャスティングがいい。

この映画がLGBTへの理解を進めたという側面もあるらしい。

自分の性不一致を、ストッキングを履いて目覚めるところが印象的だ。
逆の立場だったら、つまり女性が男性性に目覚めるのはどんな時なのだろう、と考えずにいられない。
歌舞伎は?宝塚は?引き込まれて見たが、見終わってから大変考えさせられた。女というのはフェティシズムナルシシズムで出来ているのか、という疑念が晴れない。

今日の俳句はこじつけでもないのよ。
LGBTを、精神病として片付けようとして本当の精神病を招く側面がある。しかし手術を受けてまで女性になろうとするのも手術があるからこそで諦められない。
身体髪膚これを父母に受くあえて毀傷せざるは孝の始めなり。これは救いの言葉でもある。

ハンマース・ホイ、エゴンシーレ、タマラ・ド・レンピカ、パスキンの匂いが濃厚に漂う映画なので、難しいこと考えなくても楽しめます。