エミリー ウングワレーはサイクロンか

オーストラリア大陸アボリジニの女性の作品を国立新美術館で見た。
http://www.emily2008.jp/viewpoint.html
生命のオーラにやられちゃったわ。
80才から描いたという作品の数々。彼女にしか描けない、これしか彼女は描けない、確信的な表現。点描。無数の線。ため息の出るような濃厚な色。こんな作品見たのは初めてだ。あやうく泣くところだったわ。
見ながら十数年前にジャワ島に行った時のことを、まざまざと思い出した。そのジャワの小さな村で、村中のバティックを見せてもらって、とても気に入った布があった。他の布と明らかに違うのは、バティックの特徴である繊細さが無い。替わりに骨太な構成力というか荒々しさがある。鳥が飛んでいる模様だが、バタバタと羽音がしそうである。値段を聞くと、その村のバティックの、一番高価なクラスの値段だ。高価といっても、数千円。もちろん買いたいと思ったのだが、案内してくれた、村で一番上手な染め手といわれている女性が、こんな(できの悪い)布をこんな値段では売れない。もっと安くしろと、その作り手に迫った。言われた女性は断固として譲らず、結果、私が手に入れることも出来なくなってしまった。その旅で私は200枚くらいの布を買ったのだけど、覚えているのはその買えなかった布だけだ。作り手の確信というのは、その作品を裏打ちするのよね。というよーなことを考えながら会場を回りました。出口でカタログを買おうと思ったのだけど、きれいさっぱり作品のオーラが消えている。絵はがきも、複製画も全然魅力が無いのには驚いてしまった。神を見たのかもしれない。