第二回 句会


幼な子の 掌よりこぼるる 雛あられ 飛行船(まんさく・わさび・柚)
もう熱燗は いらないから 寒明ける いて丁(あまり)
風過ぎて 揺れる水面に 春光る 柚(あまり・まんさく)
菜の花や 干物ぞろめく 浜街道 わさび(あまり・柚)


仮の世に 春の雨ふる 岩絵の具 あまり(いて丁・わさび・飛行船・鶉)
春の雪 なくしたことを 思い出す 鶉(あまり)
春分と いう分岐点を またぎけり 飛行船(あまり)
春疾風 受けて駅伝 ひた走る 柚 (あまり)
春一番 吹きだまりのちり かさこそと まんさく(あまり)
春暖炉 ゆるりと暮れる 部屋の中 わさび(あまり)
焼き栄螺 迷路の奥の 尻尾かな いて丁(あまり・飛行船・わさび・柚)


林立す ビル包み込む 春霞 柚(あまり)
春の雷 轟き見上げ 午後三時 鶉(いて丁)
わた食えば 点ることなし 蛍烏賊 いて丁(飛行船・鶉)
春の陽に 命貯めてる 眠り猫 わさび(あまり・いて丁)
ロボットが 猫に恋して 春の雨 あまり(柚)


まんさくに 色取り戻す 帰り道 まんさく(わさび・いて丁・鶉)
交差点 恋や花粉や もやもやと わさび(あまり・まんさく)
口紅の 封切る蛇 穴を出づ わさび(あまり・飛行船)
沈丁花 目を閉じ君の 咲くを知る 鶉(柚・まんさく)
水浴びの 雀の上を 鳥帰る あまり(鶉)
春朧 工事の音の リフレイン 柚(あまり)


浜町を 声高に過ぐ 猫の恋 いて丁(あまり)
行く先を 迷う我が身に 春の雨 まんさく(あまり・わさび・いて丁・鶉)
昼餉する 友の微笑み 春包む 柚(まんさく)
春服や 人事考課の 裏おもて いて丁(あまり・飛行船)


春嵐や 這ひつくばって 過ごし居る いて丁(あまり)
野の匂ひ 空の匂ひや 草の餅 あまり(いて丁・柚・鶉)
春一番 吹いて机上は 砂漠かな 飛行船(まんさく)
春雨に 濡れて肩寄せ 屋台酒 柚(あまり)
春雨や 傘さす人と 別れたり わさび(あまり・飛行船・まんさく)
上布織る 指先むずる 春浅し まんさく(あまり)


麗らかや 妻笑みもらす 雛のごと 飛行船(あまり・柚・わさび)
残り月 酔ひ覚めの水 なま温し わさび(あまり・いて丁)
春の雨 利休鼠は こんな色 いて丁(あまり・わさび)
残雪が 人に知らせる けもの道 鶉(あまり)
麗らかな 日ざしの中の 声遠く 柚(あまり)
土曜日の 何はともあれ 桜餅 あまり(飛行船・鶉)
旅人が 身をちぢめるも 虫出づる まんさく(あまり)